目次
忙しい人のための、今回のポイントまとめ
- とにかく目標がだいじ。本時の目標を立てよう。
- 主語を統一しよう。学習活動は生徒がすること。指導上の留意事項は授業者(先生)がすること。
- 授業での先生の仕事の一つはタイムマネジメント。学習活動にかかる時間は細かく書こう。
- 評価規準は一か所に書けばOK。目標と評価が対応していることがだいじ。
前回の復習
指導案を書いてみよう!【指導案の書き方(概要編)】- 指導案には統一された書き方はない。
- 指導案は人に読んでもらうもの → リーダーフレンドリーにせよ。
- 指導案には大きく分けて細案と略案がある。
- 細案とは単元全体の指導計画のこと。
- 略案とはその日のその時間、1時間分の指導計画のこと。
- 最初からぜんぶやろうと思わないでいい。まずは略案から。
なお、一斉授業のコツについてはここに書きましたので、よければ併せて読んでみてください。
一斉授業を成立させるために、まずは身につけておきたいこととりあえず、略案の全体像を把握しよう
繰り返しになりますが、指導案には統一された様式はありません。が、ほとんどの指導案に共通する点をざっくり挙げてみると、
- 実施日時
- 実施教室
- 授業者名
- 科目名
- 学年・クラス
- 単元名
- 本時の目標
- 学習の流れ(展開)
さらに、「学習の流れ(展開)」は、
- 学習内容
- 学習活動
- 指導上の工夫・留意事項
- 評価方法
この部分は、たぶん所属する団体や、自治体によって違っていて、「予想される生徒の反応」という枠があったり、「主な発問等」という枠があったりします。
とりあえずぼくは、「学習活動(生徒がやること)」「指導上の工夫・留意事項(授業者がやること)」「評価方法(なにをどうやって評価するか)」があればいいのではないかと思っています。
それを踏まえて、簡単にぼくが作った指導案のフォーマットを見てみてください。
あああああ。
いやですよね。わかりますわかります。
これを埋めるとかめんどくせええええええって感じですよねわかります。
でも大丈夫。ぜったい誰にでも書けます。
しかもある程度、しっかりしたものが。
ちなみに、最終的にぼくが今回作った指導案はこんな感じです。
とにかくやってみましょう!
書けるところからとりあえず埋めていく
とにかく埋められるところから書いていくことがだいじです。
人間、取り掛かりはじめがいちばんエネルギーが必要で、はじめてしまえばなんとかなったりします。
この指導案の様式を見て、まず埋められるのは、「授業者」「実施日時」や「実施科目」「学年・クラス」でしょう。
決まっていることが多いので、ここはあっさり書いてしまいます。
次に、「単元名」です。
「単元」とは何か、という話をはじめると、泥沼感があるので、ここでは単に、教材名としておきましょう。
ただ、ここではいちおう、教材だけ書いておくことにします。初心者向けである、ということ、そして、たぶん指導案を書くときに困っている人は、その内容の書き方(特に本時の展開とか学習の流れとか言われるもの)を、どうするか悩んでいるものと思うからです。
教材は、芥川龍之介の『羅生門』とすることにしましょう。
本時の目標を立てるために
授業をするにあたって、まずなによりも大事なのは、その時間で、児童・生徒に何をできるようにさせたいか、つまり目標です。
目標の立て方は、最初のうちはよくわからないかもしれませんが、とりあえず学習指導要領の指導事項を踏まえて書くことがだいじです。
ここでは、高等学校の国語総合における「読むこと」の領域で目標を設定する場合を想定して書いてみます。
わかりやすいように、目標から学習活動を考えるのではなくて、ちょっとズルいですが、学習活動や、発問を想定したうえで、関連する指導事項を考えることにします。
つまり、
↓
中心的な発問と学習活動の決定
↓
本時の目標の決定
↓
指導案に落とし込む
実際に、授業を考えるときには、教材研究の中で、「こういう発問で考えさせたい」とか、「こんな学習活動だったら、生徒は読みを深めることができるんじゃないか」とか、いろいろなことを考えます。
つまり、必ずしも単線的な思考(一直線の思考)で考えることは(それが理想的な状況であるかもしれないけれど)まれだと思います。
思考は線状的ではなく、もっと空間的なものなので、どこをとっかかりにしてもいいのです。
だから、学習活動から考えるという方法も、悪くはないと思っています。だいじなことは、児童・生徒に力がつくかどうかなのです。
教材研究を行う
授業を作るうえで、教材研究は欠かせません。とはいえ、教材研究って具体的にどうすればいいのかは、暗黙知みたいになっていて、あまりはっきりしていません。
教材研究については、別の機会に詳しく書きたいと思っていますが、ここでは簡単に、ぼくなりの教材研究の仕方を書いておきます。
有名な国語教育の実践家である野口芳宏氏は、教材研究を3つに分けて整理しています。
- 素材研究
- 教材研究
- 指導法研究
「素材研究」とは、扱う文章を教材として見ることからいったん離れて、個人として読み、味わうことです。一人の大人として作品に向き合って読むことであり、野口氏は、この「素材研究」の段階がもっとも重要だとしています。
つづく「教材研究」は、子どもたちがその教材を読むときに、どんなところを読み間違えたりするかを考えながら読むことです。そのうえで、授業者が授業を通して「ここまでは読めるようになってほしい」とか、「こんな読みをできるようになってほしい」といった、いわば理想的な状態を想定し、子どもたちの実態と理想的な状態との距離をはかります。
最後の「指導法研究」は、その距離をどのような方法で埋めていくかという具体的な手段を考える段階です。どのような活動をさせるのか、どのような発問をするのかなど、具体的な方法を考えていきます。
ぼくはいつもここまでカッチリはできませんが、この3つを意識しながら、次のようなことをしています。
- 最低でも10回以上は音読する。(音読しながら気づいたことなどをメモしておく)
- 何が読めるようになれば、この教材を勉強したと言えるのか(教材のポイント)を自分なりに考える。
※これは他の教科で考えると、その授業で何ができるようになればいいのかを1〜2つに絞るということです。 - 生徒が読み間違えそうな部分や、浅い読みで留まりそうな部分を予測する。
- 先行実践を調べる。できるだけたくさん。(Googleで教材名を検索してもいいと思います。あと、明治図書の教育記事DBも活用しています。)
- 先行研究を調べる。できるだけたくさん。(CiniiやGoogle Scholar、Webcat Plusなどを使います。必要があれば、ERICなどでも調べます。)
- どんなにくだらない発問でもいいので、とにかくたくさん発問を考える(目標50個以上。先行実践の発問も含めてよい)
これらの作業は、それ自体には意味がないものもあるかもしれません。
ただ、このような作業をルーティンみたいにすることで、何度も読む、ということを自然とすることになります。
たとえば生徒に課題や疑問を考えさせて、生徒たちから出た課題や疑問について授業で扱う、という場合にも、授業者にどのくらい引き出しがあるかによって、生徒たちの学びの深さが変わってきます。
もちろん生徒たちが授業者の読みを超え出ていく場合もありますし、その方がうれしいのですが、そのときに、「すごい!」と評価できるようにするためにも、できるだけたくさんのことを考えておくことはだいじなのです。
(例)芥川龍之介の『羅生門』でやってみましょう。
とりあえず何度も音読する。
とりあえず、芥川龍之介の『羅生門』を何度も音読します。
授業のポイントを考える
なんとなく、この授業のポイントは、「中心的な登場人物である「下人」の心情の変化だ!」と考えたとします。
授業のポイントを考えるときには、学習指導要領の指導事項をヒントにすると考えやすいです。ここでも、指導事項と授業の学習活動と授業の目標との再帰的(行ったり来たりする)な関係性があります。
「下人」の心情の変化は何度も起こっているので、「とくにだいじなのはどこであるのかを、本文を根拠に読み取れればいいのではないか?」と考えてみます。
この時、どこがだいじなのか、授業者なりの答えをもっておきます。
先行実践を調べる。
Googleで、「羅生門 授業」で調べたり、「羅生門 心情 変化」で調べたりしてみます。
いくつか指導案や、実践記録が載っているので、ざっと目を通します。
明治図書の教育記事DBでも調べます。「羅生門」だけで検索すると膨大なので、検索条件を厳しくして、中・高の国語のタグが付いているものだけを調べます。215件ヒットしたので、ざっくりタイトルだけ眺めていきます。
「なるほどー、ジグソー法使う授業かー」とか、「図にするのかー」とか、「もとになった『今昔物語』とかを使う手もあるかもなあ」とか、いろいろ考えます。
授業のポイントを考える
Google Scholarで、「羅生門 授業」とか入れてみます。
すると、例えば、こんな論文や、こんな論文が無料で読めるので、とりあえずざっと目を通します。
Webcat Plusでは、連想検索ができるので、適当に検索して、関係しそうな本を探します。
もし近くの図書館とかにあれば、借りに行ったりして読みます。無理そうならあきらめてもいいと思います。
発問を考える
超重要な段階、発問を考えていく段階です。
「作者は誰ですか」とか、「タイトルは何ですか」「登場人物は誰ですか」「舞台となっている時代は何時代ですか」など、簡単なものから、「下人の心情は何回変わっていますか」、「どの心情の変化が一番大きいと思いますか」、「老婆がきれいでグラマラスでエロいお姉さんだったら、下人の行動は変わっていたでしょうか」、「下人の行動を肯定的に評価できますか」などのように、答えのない問いまでとにかくたくさん考えます。
この作業は、評価問題(いわゆる定期考査)を作るときにも役立つので、サボらずやります。
中心的な発問を決める
教材研究で作った発問の中から、その時間に考えさせたいメインの問いを考えます。
今回は「下人の心情変化のなかで、どの心情の変化が一番大きいと思いますか」にすることにしました。
しかしこの発問は、あまりわかりやすい語順に並んでいないので、語順をいろいろ変えて、いちばんわかりやすい(であろう)一文に作り変えます。
発問は、授業準備の段階で、一度で聞いてわかりやすい一文にするようにしましょう。
できるだけ言い換えなくてもいいようにする必要があります。なぜなら、生徒たちは、補足したり、言い換えたりすればするほど、何を問われているのかわからなくなることが多いからです。
ここでは、「下人の心情変化のなかで、心情の変化が一番大きいのは、どの場面ですか」に作り直しました。
また、生徒たちはこういうことを考えてはいないだろうから、この問いなら生徒の思考を促すことができるのではないか、という風に選んでもいいと思います。
よい問いの基準は明文化しにくいので、とりあえずやってみて、生徒の反応を見ることもだいじです。
メインとなる学習活動を決める
発問が決まったら、その発問をどうやって考えさせるか、つまり学習活動を考えます。
たとえば、個人で考えさせて討論させるのかとか、グループごとに考えをまとめさせるのかとか、明らかに違うと考えられる場面をつぶす理由を考えさせるのかとか、方法はいくつもあります。
絶対によい、正しい方法というのはありません。どのような学習活動を行えば、生徒たちは必死に考えてくれるだろうかと考え、やはり試していくことがだいじです。
ここではざっくりと、
本時の目標を立てる
学習指導要領の指導事項を確認する
現行の高等学校国語科の、国語総合における「C 読むこと」指導事項は、つぎのようになっています。
- 文章の内容や形態に応じた表現の特色に注意して読むこと。
- 文章の内容を叙述に即して的確に読み取ったり,必要に応じて要約や詳述をしたりすること。
- 文章に描かれた人物,情景,心情などを表現に即して読み味わうこと。
- 文章の構成や展開を確かめ,内容や表現の仕方について評価したり,書き手の意図をとらえたりすること。
- 幅広く本や文章を読み,情報を得て用いたり,ものの見方,感じ方,考え方を豊かにしたりすること。
中心的な発問や、学習活動によって達成できそうな指導事項を選ぶ
さて、もう1度、中心的な発問と学習活動を整理しておくと、
- 中心的な発問:下人の心情変化のなかで、心情の変化が一番大きいのは、どの場面ですか
- メインとなる学習活動:グループでの話し合い
と考えてきたのでした。
中心的な発問に含まれているキーワードは、「心情」です。
学習指導要領の指導事項の中で、「心情」と入っているのは、「ウ 文章に描かれた人物,情景,心情などを表現に即して読み味わうこと」だけですね。
これを使うことにしましょう。
指導事項から目標をつくる
本時の目標を設定する上で、いちばん簡単なやり方は、
つまり、本時の目標を、「文章に描かれた人物,情景,心情などを表現に即して読み味わうことができる」とする方法です。
この方法だと、文末の「~こと」の後ろに、「~できる」という語を加えるだけでいいですし、(当たり前ですが)きちんと学習指導要領の指導事項を踏まえているので、学習指導要領に照らした目標の妥当性という点でも、問題ありません。
ただ、これだとあまりにも抽象的なので、『羅生門』仕様に変えてみましょう。
すると、
さらに言えば、今回授業で扱うのは、「下人」の心情だけなので、
もっと言えば、心情は心情でも、この授業で扱うのは心情の変化ですので、
これで目標ができました。
目標の後ろには、その目標が、どの領域の力なのかを明記します。
国語科であれば、「知識・理解」「関心・意欲・態度」「話す・聞く能力」「書く能力」「読む能力」のうちから選びます。他教科でも、それぞれ領域がありますので、どの領域の力をつけるための授業なのかがわかるようにしておくと、読む人が便利です。
また、「この目標は学習指導要領の指導事項のこれを踏まえているよー」ということを示すために、たとえば「C 読むこと(1)ウ」のように書いておきます。
これを書くことで、授業参観者は、「ああ、あの指導事項を指導する授業なのね」とか、「あの指導事項にこの目標でいいのかな?」とか、考えることができます。
引用を明示するのと同じように、難しい言葉でいうところの反証可能性を担保することにつながります。
では、ぼくが簡単に作った指導案(略案)のフォーマットに流し込んでみましょう。
「え!? こんなにやったのにまだここまでかよ!!」と思ったかもしれません。確かに!
でも、今まで考えてきたことで、あとはどんどん埋まっていきます。
とにかく目標の設定が難関なのです。適切な目標を立てるためにも、教材研究は不可欠です。
逆に言えば、適切な目標さえ立ててしまえば、あとは教材研究したものを授業に落とし込んでいくだけです。
学習の流れ(展開)は主語に注意して書く
次に「学習の流れ(展開)」を書いていくわけなんですが、その前に注意点があります。
それは、「学習活動」「指導上の工夫・留意事項」を書くときに、主語に注意して書かなければならないということです。
そもそも「学習活動」は、生徒が学習するために行う活動のことです。そのため、「学習活動」の欄を書くときには、生徒が主語にならなければなりません。
対して、「指導上の工夫・留意事項」は、授業者が行うことです。したがって、主語は授業者にならなければなりません。
これは極めて基本的なことなのですが、初任者や教育実習生の指導案を見ると、よく「学習活動」なのに「~させる」となっていたり、「指導上の工夫・留意事項」なのに「わからないところは質問する」となっていたりします。
基本的な形式を守って書くことができる、というのは、とてもだいじなことです。
メインの学習活動を書きこむ
さて、とりあえず決まっているのはメインの学習活動でした。
メインの学習活動は、だいたい授業の中盤から後半に行われることが多いので、指導案の「学習活動」の真ん中よりちょっと下あたりに書いておきます。
他の学習活動は、このメインの学習活動から逆算して考えていくことにしましょう。
ほかの学習活動も書き込んでいく
メインの学習活動以外には、どんな学習活動が必要そうでしょうか?
言い換えると、どんな学習活動があれば、グループで下人の心情の変化について話し合うことができるでしょうか?
まず、心情の変化がいちばん大きな場面を選ぶためには、どの場面で心情が変化しているかを確認しておくことが必要です。つまり、選択肢を整理しておかなければなりません。「下人の心情が変化した場面を確認する」学習活動が必要そうです。
また、グループで活動しようと思っても、その前に、それぞれの生徒が自分なりの意見を持っていた方が、話し合いはスムーズに進むはずです。すると、グループ活動をする前に、「個人で自分の考えを書く」学習活動も必要な気がします。
さらに、評価をする、という観点から考えると、個人の考えを、グループ活動をした後で、再度書かせた方がよさそうです。したがって、「他の人の意見を聞いた後で、再度自分の意見を書く」学習活動もあった方がよいなあ、と思います。
グループ活動の結果は、クラス全体でシェアした方がよさそうだなあ、とも思います。そうすると、「グループでまとまった意見を全体に発表する」学習活動も入れよう、ということになります。
あとは、これはぼく個人の思想ですが、国語の基礎力は何よりも「音読」だと思っているので、授業の最初に「音読する」活動を入れたいです。
また、「本時の目標を確認する」、「振り返りをする」活動も、定型的に入れておきましょう。
さて、ここまで出てきた学習活動を、順不同に列挙してみます。
- 下人の心情が変化した場面を確認する
- 個人で自分の考えを書く
- 他の人の意見を聞いた後で、再度自分の意見を書く
- グループでまとまった意見を全体に発表する
- 音読する
- 本時の目標を確認する
- 振り返りをする
これらを、メインの学習活動の前後どこにくるかを考えて整理しなおします。
そのうえで、学習活動の頭に、番号を打っていきます。全部でいくつの学習活動が行われるのかを、参観者にわかりやすくするためです。
時間配分を考える
学習活動が出揃ったら、それぞれの学習活動にどのくらいの時間が必要かを考えていきます。これは絶対にしておかなければなりません。
というのも、授業者の重要な仕事の1つは、「時間管理(タイムマネジメント)」だからです。
授業者は、学習時間を適切に管理して、50分をフルに活用し、児童・生徒に学習させる義務があります。
ありがちですが、50分に収まりきらず、チャイムが鳴っても授業を続ける、といったことをする先生もいますが、ぜったいに延長はしてはいけません。
生徒に時間を守らせるのであれば、教育者である授業者はぜったいに時間を守らなければいけません。率先垂範です。
そのためには、授業で計画している学習活動に費やす時間が、それぞれ適切であるのかを、自分でも確認しなければなりませんし、ほかの人からも指摘してもらわなければなりません。
指導案の学習活動の部分に時間配分が書いてあれば、ほかの先生から「この学習活動は、5分じゃ多すぎるんじゃないかな?」とか、「これは15分くらいかかるから、もっと時間を確保しないと」とか言ってもらえます。
最初から完璧にできる必要はありません。大切なことは、いろんな人に見てもらう中で、修正しやすい指導案の形式にしておくということなのです。
また、時間配分を指導案に明記しておくと、授業後の振り返りにも使えます。実際に授業をやってみて時間が足りなかったときに、どの学習活動に時間がかかりすぎたのかや、どこで時間を短縮できたのかといったことを反省する材料になります。
とりあえず、ここではぼくなりに時間配分を書いておきます。
指導上の工夫・留意事項を箇条書きで書く
「指導上の工夫・留意事項」の欄には、それぞれの学習活動のなかで、生徒にどんなことを具体的にさせるのか、とか、つまずいている生徒にはどんな支援をするのか、といったことを箇条書きで書いていきます。
とりあえずは、思いついたことを書いていけばいいと思います。
たとえば、「個人で書かせると言っても、書けない生徒も出てくるかもしれない」と思ったのなら、その対応として、「ほかの生徒と相談してもよいことにしよう」とか「机間巡視をしながら、適度に声かけをしよう」とか、考えられると思います。
どのような工夫をするのが効果的なのか、というのも授業研究の重要な要素の1つです。ある程度具体的に書けるといいと思います。
また、発問や、指示の言葉をここに書き込むのも、どんどんやりましょう。何より自分の頭の整理ができますし、参観者が具体的な意見を出しやすくもなります。
ということで、ぼくなりにざっと考えて書き込んでみました。
評価の欄を埋める
評価場面は1時間に1回でOK
最後の難関、「評価方法」ですが、評価についてもいろいろと複雑な問題を孕んでいるので、ここではものすごく簡単に「評価規準」のつくり方を書いておくだけにとどめておきます。
だいじなことは、「本時の目標」と「評価規準」が正しく対応している必要がある、ということです。
ひとまず、指導案には「評価規準」が必要である、ということだけ押さえておきましょう。
逆に言えば、この対応関係があれば、ひとまず指導案の形式は整うのです。
すると、評価は1時間のなかで1回あればいい、ということになります。今日の授業で生徒たちが目標を達成できたかどうかを判断するための評価だからです。
指導案に入れる評価は1度でいいですが、授業の中で、授業者は実際には何度も途中段階での評価を行っています。いわゆる「形成的な評価」です。
ここではあくまで指導案を書くという目的だけを考えて、必要最低限のことだけを書いています。
目標を達成できたかどうかを評価するのですから、授業の終盤に評価場面があるはずです。今回は、学習活動「7. 全体の意見を聞いた上で、自分の考えをノートに書く。」で評価することにしましょう。
評価規準は、目標を「~(し)ている」に変えればOK
肝心の評価規準ですが、これを作るもっとも簡単な方法は、
考えてみれば、目標が達成できたかどうかを判断するための規準なのですから、それをでき「ている」かどうかで評価すればいいのです。
つまり、今回の授業の評価基準は、「「羅生門」に描かれた下人の心情の変化を、表現に即して読み味わっている」とすればよいわけです。これでしっかりと目標と評価が対応しました。
あとは、この評価の領域(ここでは「読む能力」)と評価するための方法(例えば「ノート」「プリント(ワークシート)」「発表」「観察」など)を書き添えます。
完成!
ということで完成です。これがぼくなりの指導案(略案)のつくり方です。
これは、あくまで指導案を書くための1つの方法ですが、このやり方に慣れると(つまり何度も書いてみると)、普段の授業の準備もどんどん楽になります。
また、生徒にどんな力を付けさせたいのかを、いつも意識するようになります。ぱっと授業を参観に来られても、授業の意図を、明確に説明できるようになります。
指導案はめんどうな作業だと思いがちですし、実際、書かなくて済むなら書きたくないものでもあります。「ただでさえ忙しいのに、こんなもの書いてるヒマなんてねーよ!!!」と思うのももっともです。
でも、指導案を書くことは、少なくともぼくにとっては、授業がうまくなるうえで必要な作業だと思っています。
さて、もう一度まとめておきましょう。
- とにかく目標がだいじ。本時の目標を立てよう。
- 主語を統一しよう。学習活動は生徒がすること。指導上の留意事項は授業者(先生)がすること。
- 授業での先生の仕事の一つはタイムマネジメント。学習活動にかかる時間は細かく書こう。
- 評価規準は一か所に書けばOK。目標と評価が対応していることがだいじ。
ぜひたくさん書いて、慣れてほしいなあと思います。そのとき、少しでもこの記事が参考になれば幸いです。
次回は細案の書き方について、特に「教材観」「生徒観」「指導観」の考え方について書こうと思います。
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