選書するにあたって
年度末になり、新規採用で、かつ学校現場に出たことのない人は、4月からの生活に期待感があるでしょうけれども、それ以上に不安感も大きいと思います。
正直、ぼくはめちゃくちゃ不安でした。
ちゃんと授業できるのか、とか、生徒とうまくコミュニケーション取れるのか、とか、考えれば考えるほど不安になっていました。
実際には現場に出てみないとわからないことはものすごく多いのですし、飛び込んでみれば案外なんとかなる部分もあります。
ただ、ぼくはまったく教育に関係ないことをそれまでやっていましたし、教員になろうと思ったのも、就職する前の年の6月ごろだったので、ほぼなーんにも知らないままに、教育の世界に入っていったわけです。
ぼくは教員になってから、とにかくたくさん本を読んで、いろいろ試して、研修も受けて、ほかの先生方に追いつきたい、という一心でここまでやってきました。
今回は、ぼくが教員として働き始めてから読んだ本の中で、早く教えてもらいたかったなあ、という本をものすごく簡単に紹介します。
総論
大村はま『新編 教えるということ』
とりあえず読みやすい大物の教育者の本を。
大村はま氏の単元教育は、すごいの一言で、フォロワーがたくさんいて、でもその質が必ずしも良いとは言えなくて、というの、まああるんですけど、とはいえ大村はま氏は偉大な実践家です。
とりあえず目を通して見てほしい。
大村はま氏の子どもへの眼差しは、ものすごく勉強になります。(できるかどうかは別ですが)
向山洋一『教師修業十年』
向山洋一氏は、現在はTOSSという民間教育団体の代表をしていて、TOSSの活動には賛否あるわけですけれども、向山氏のこの本と、後に紹介する『授業の腕を上げる法則』の2冊は大変具体的で、しかも読みやすく、面白いので、読んでみてほしいです。
TOSSの実践に批判的であるか否かは関係なく、とりあえず読んでおくべき。
ちなみに、ぼく個人は現在のTOSSの実践に賛同しているわけではありません。
授業技術
岩下修『AさせたいならBと言え』
これはもう、ほんと、必読です。みんな読むべき。
児童・生徒を動かす言葉、あるいは、思考を促す言葉はどのようなものか。それは、させたいこと・教えたいことを直接的に聞いたり、言ったりするような言葉ではない。Aさせたいときには、Aと言うのではなく、Bと言え、という話。これはもう、ほんとうに重要な発見だと思う。
例えば、有名なランディ・パウシュ氏の『最後の授業』の中で、「頭のフェイント」という考え方が出てきます。
これはざっくり言うと、大切なことは、直接的ではなく、間接的に教えよ、という主張なのですが、その具体的な方法論が書かれているのが、本書です。
極めて具体的。で、事例も多い。
指示の言葉だけでなく、発問も、できれば間接的な言葉で問いたい、と思わせてくれます。(しかしそういう発問を考えるのはマジで大変なんですけども)
続、もあります。
向山洋一『授業の腕を上げる法則』
授業をするうえで重要な原則が、10項目に整理され、それぞれの具体的な事例を上げながらかなりわかりやすく説明されている名著だと思う。
ちなみに、『授業の腕を上げる法則』には、続、もあります。
でもまあ、とりあえず、向山氏の著作は上2冊かな。
野口芳宏『野口流 どんな子どもの力も伸ばす 全員参加の授業作法』
野口芳宏氏の一番新しくて、一番網羅的な本を。
野口芳宏氏は、「鍛える国語」というスローガンを掲げて、かなり硬派な教育論を展開しています。
とはいえ、どの本も読みやすく、またかなり具体的で、有益です。
国語科の先生にはぜひ読んでいただきたい。でも、ほかの教科・科目の先生であっても、得るものは多いと思います。
ぼくは「全員参加」という、一斉授業を行う上でいちばんだいじな考え方を、野口氏から学びました。
一斉授業を成立させるために、まずは身につけておきたいこと生徒指導・教育相談
小栗正幸『ファンタジーマネジメント “生きづらさ”を和らげる対話術』
小栗正幸氏の著作は、思春期の生徒に関わる先生方には必ず読んでおいてほしい。
それまでの本のエッセンスをまとめたこの本だけでも読んでほしい。
小栗氏は、生徒指導における「共感」的な指導と「説諭」的な指導との二項対立以前に、そもそもそのような指導ができる(意味あるものになる)ような関係性を作らなければならない、という提案をされています。
この視点は極めて重要であり、ぼく自身、小栗氏の一連の本を読んでから、生徒指導を行う上での生徒との関係性づくりを重要視するようになりました。また、具体的にどんなことに気をつければよいのかも学びました。
そのへんのことは、以前にも書いていますので、参考にしてください。
生徒指導困難校に勤務してきた教員が考える生徒指導で大切にしたい8つのことってかこんな本も出てるんだ。ほしい。買おう。
また機会があれば紹介します。
月始め恒例の大量の本(第一弾)。今月は読めるはず。 pic.twitter.com/wzAChQcb2e
— しばしん (@sh1ba_sh1n) March 2, 2019
森俊夫『先生のためのやさしいブリーフセラピー―読めば面接が楽しくなる』
「ブリーフセラピー」って何?
はい。ここ読んでみてください。
ものすごく簡単にぼくなりにまとめると、「短期間でのカウンセリング」みたいな感じです。
実際、カウンセリング・スキルは、別に専門でもないのに教員にめちゃくちゃ求められていて、なんとなーく傾聴、みたいな感じで凌いでいる場合がままあると思います。
でも困るのは、そういうの、傾聴一辺倒みないな、ゴリ押しになりがちであるということ。
あと、「俺の考えた傾聴」ってのをやりがちでもある。
〈聞く〉技術に関する本はほかにも良著がありますし、カウンセリング技法について学ぶのは、それこそ専門書なんかを読んでもらえればいいと思うのですが、この本は「先生のための」とあるように、学校現場にチューニングされていて、大変便利です。
文体もかなり軽快ですし、すらすら読めるのではないかと思います。
小林昭文『アクティブラーニングを支えるカウンセリング24の基本スキル』
「アクティブラーニング」とか別にどうでもいいのですが、教員をやっていると、授業中、生徒にどんな声掛けをすればいいのだろう、とか、授業外でも、生徒の相談にどんなふうに乗ればいいのだろう、とか、そういう悩みが出てくると思います。
この本は、いちおう「アクティブラーニング」と銘打ってはいますが、わりと広く教育相談についていろいろ基本的なことが書かれているので、かなりおすすめです。
世間には「アクティブラーニング」と聞くだけで拒否反応を起こす人もいるようですけれども、とりあえず読んでみるってのはだいじなことです。ぜひ。
特別支援教育
杉山登志郎『発達障害の子どもたち』
特別支援教育に関する勉強は必須ですけれども、細かく言うといろいろあり、かつ専門的な内容にもなってきますので、とりあえず読んどくとしたら、という視点でこの本。
しかし特別支援教育は、かなり個々に応じた対応が必要になってくるので、その都度勉強し、試し、成功したこと、うまくいったことを記録して、その生徒にどういう対応をするのがよいのかを学校全体で地道に共有していくしかありません。
とはいえ、まったく知識がない状態で研修にいくよりも、ASDとADHDって何が違うの、みたいなことくらいは知っておかないといけないですよね。
この本もぜひ。
生徒指導
寺崎賢一『生徒指導入門』
生徒指導関係の本については、前にも記事を書いたのでそちらを参考にしてほしいのですけれど、1冊選ぶとしたらこれ……か……?
この辺から入って、参考文献を読んでいくのがいいと思う。
でも生徒指導も、まあざっくりした原則はあるけれども、例えば生徒の問題行動の背景にはさまざまな要素が複雑に絡まり合っているし、積極的な生徒指導の行い方も、たぶん生徒によっていろいろ効果的だったりそうじゃなかったりすると思う。
この辺は、現場に出るまでに、ざっくり原則的な対応を学んでおいて、あとは臨機応変に対応していくしかないですね。
でもなにかしらの原則をもっておくことはだいじ。それを更新していくことは必要だけど、そもそも更新するものがなければ先に進めないので。
デザイン
高橋佑磨・片山なつ『伝わるデザインの基本』
プリントも、資料も、たくさん作るのが学校現場。
しかし自作のプリントは、その場の思い付きで作られたようなものが多かったり、ぜんぜんデザインとか考えていなかったりする(気がします)。
ひとまずこの本くらいは読んで、デザインの基本を学び、生徒が取り組みやすいプリント、ほかの先生方が見やすい資料を作れるようになると、大変よいのではないでしょうか。
ちなみにデザインは超だいじだと思っているので、おすすめを以下に挙げておきます。でも1冊選ぶなら、『伝わるデザインの基本』かな。
いちばんおすすめなのはこれです。これほんといい本で、あとで紹介する『ノンデザイナーズデザインブック』のエッセンシャル版というか、そんな感じで使いやすく、わかりやすく、即効性もあります。
伝わるデザインの基本 増補改訂版 よい資料を作るためのレイアウトのルール https://t.co/MoSIpwRdqQ
— しばしん (@sh1ba_sh1n) February 28, 2019
で、教科書っぽいのがこちら。これはいいんですけど、翻訳ってこともあって、和文に特化してるわけではないです。むしろ欧文が基本。しかしクロゾフさんにはむしろ都合がいいかもしれません。
ノンデザイナーズ・デザインブック [第4版] https://t.co/ttbtezYXpp
— しばしん (@sh1ba_sh1n) February 28, 2019
ビフォーアフターでわかりやすいのはこれ。こちらはキャッチーな文(コピーみたいな)にも言及してあるし、パラパラとめくるだけでも楽しいし、実用的でおすすめです。
やってはいけないデザイン https://t.co/UzvnevNQKR
— しばしん (@sh1ba_sh1n) February 28, 2019
先ほどのパワポのスライドのデザインは、これを参考に作った気がします。これもビフォーアフター系でわかりやすく、納得感を感じながら読めます。Kindle Unlimitedにもあった気がします。あ、やっぱあった。
一生使える見やすい資料のデザイン入門 https://t.co/8YgImcmKaO
— しばしん (@sh1ba_sh1n) February 28, 2019
あと、番外編として、面白いし勉強になるのがこれですね。でもテクニカルなことは、上記までの本で事足りる気がします。
誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論 https://t.co/BOztbCQl2S
— しばしん (@sh1ba_sh1n) February 28, 2019
ちなみに配色とかについては、どの本にも言及があった気がしますし、下記のようなサイトを参考にしてます。以上です! 参考になれば幸いです!https://t.co/YkF5f2X1Be
— しばしん (@sh1ba_sh1n) February 28, 2019
番外:Excelは使えるようになっておこう!
番外です。本はない。
後輩たちの傾向として、レポートを書いたり卒論を書いたりすることはよくあるために、なんとなくWordは使える、でもExcelは使ったことない、みたいな人が多い気がします。
しかし、成績処理等、学校現場では、Excelを使用する場面が極めて多いです。使えるようになっておくと、仕事が早く終わる可能性もあります(増える可能性もなくはないのですが)
とりあえず、
- IF関数
- VLOOKUP関数
くらいは使えるようになっておくとよいのではないかと。(これらができるようになるなら、SUMとかAVARAGEとかCOUNT系関数とかはできるかなって)
ぼくがTwitterでも勉強させてもらっているサイトとか読みましょう。
参考 OFFICEの魔法使いサトウヨシヒロあとググったりして、いろいろ触っておくといいんじゃないかな。本は必要だと思ったら買えばいいと思うんですけど、まあなくても最初はいいと思う。
コメントを残す