目次
この記事で言いたいことをまとめると
授業の最初に百人一首カルタやると、レディネスがつくれたり、古文文法の素材が増えていいことづくしだよ!
今回扱うのは百人一首カルタの実践
前回、ぼくの古典の授業の基本形について概要を書きました。
ぼくの古典の授業の基本形はこれだ!【概要編】- 百人一首カルタ(5~10分)
- 古文単語フラッシュカード(1分)
- 古文単語テスト10~15問(6分)
- 既習文法事項の復習チェック(5分)
- 古文文法プリント(10分)
- 本文の音読(5~10分)
- 本文の読解など(10分)
とりあえず今回は、授業の導入部分で行う「百人一首カルタ」について書こうと思います。
なぜ百人一首カルタを授業で行うのか
百人一首カルタは、ぼくが古典の授業デザインを模索していた最初の頃から変わらず実践してきました。
とにかく最初は、ゲーム形式の学習活動で、古文にたくさん触れさせたいと考えていたのです。
ぼくが高校で百人一首カルタをしたのは、大きくは次の3つの理由からでした。
- 取り札は歴史的仮名遣いで、しかもすべてひらがな表記のため、歴史的仮名遣いの読みに慣れさせることができる
- 和歌を何度も聞くことで、古文のリズムに親しませることができる
- 百人一首には、古典文法の関門のひとつである、助詞や助動詞がわりとまんべんなく使われているため、ゲーム形式で覚えさせておくことで、文法事項の指導に活用できる
とくに1や3については、授業の他の部分、例えば②古文単語フラッシュカードや④既習文法事項の復習チェック、⑥本文の音読との関連も、のちのち大きくなっていったように思います。
先行実践を参考にしてはじめる
すでに小学校や中学校での先行実践もたくさんあったので、導入はわりと楽にできました。
とくに、このブログ(以前は「空の箱」というブログでしたが、今は「円の外へ」と変わったようです。とても参考にさせていただいていました)の「五色は高3でもバロメーター」や、「中学1年五色百人一首大会プログラム」は、非常に参考になります。
また、「五色百人一首「10のルール」」のように、「五色百人一首 授業」といったキーワードで検索して出てきた授業実践をまねしていました。
百人一首カルタの概要
では、百人一首カルタを実践するまでの準備から、実際の流れを説明します。
準備物
百人一首カルタ
なんと言っても
百人一首カルタ
がなければ話になりません。
授業では、
や、
のような、のような、20首が1セットとなっているもの(つまり100首を5セットに分けてあるもの)を使います。
購入したくなければ、印刷して、生徒に作らせてもいいかもしれません。
実際、先述した「中学1年五色百人一首大会プログラム」では、中学生に百人一首カルタを自作させています。
また、既存の百人一首に、丸シールなどを付けて、20枚のセットを作ってもよいと思います。
ぼくは作るのも、シールを貼るのも手間だったので、時間的なコストを削減するために既成品を購入して使用しました。
結果的にはそれでよかったと思います。
読み札と取り札のセット数
読み札は1セットで十分ですが、取り札は人数によって変わります。
授業では1対1の試合を行うので、担当クラスで、1番人数が多い1クラスの人数を、2で割った数だけ取り札が必要です。
例えば、36人のクラスであれば、18個必要、ということです。
チャック付きポリ袋
これは別に必須ではないのですが、生徒たちが準備や片づけをするのに便利です。
取り札の20枚1セットごとに、1つの袋に分けて入れておくと、セットごとに整理できます。
生徒に準備させるときにも、袋ごと持って行かせ、片づけも袋に入れて返させればよいので、時間を短縮できます。
どんなチャック付きポリ袋でもいいのですが、
- カードが入る程度の小型なもの
- 厚手のもの
がおすすめです。
ダイソーなどの100円ショップでも、厚手のチャック付きポリ袋は販売されているので、用意されることをおすすめします。
授業の流れ
準備
1対1の試合形式を行うために、生徒に机の向きを変えさせたり、取り札を準備させたりします。
流れとしては、
- ペアで机を向き合った形になるようにくっつけさせる。
- ペアのどちらかに、取り札1セットをとりに来させる。
- それぞれの机の上に、5×2列で並べさせる。(自分の机には10枚の札が、自分に読める向きで置かれている状態をつくらせる)
- お互いにあいさつをさせる。(「よろしくお願いします」)
です。ここまでが約1分。
試合
いよいよ試合です。
試合は流れるように行っていきます。
余計な指示はせず、淡々と進めます。
- 空札(取り札に入っていない和歌)を読む。(これがスタートの合図になる)
- 和歌を読むときには、下の句を2回読む。(慣れてきたら1回にしたり、難しそうであれば3回にしたりしてもよい)
- 取り札に対応した読み札を、空札と同様に読んでいく。
- 17枚読み終わったら終了する。
試合結果の確認
試合結果を確認します。
- それぞれが取った札の枚数を確認する。
- 取った札の枚数が多いほうが勝ち。
- 勝敗の結果にしたがって、席を移動する。
席の移動は、他の生徒と試合をさせるために行います。
できるだけたくさんの生徒同士で試合をさせたいので、対戦相手が固まってきたら、席替えをしたりしています。
とにかくゲームでたくさんの人と触れ合ってほしいのです。
席を移動したら、再び試合を始めます。
このときも余計な指示はせずに、淡々と空札を読み始めます。
これがスタートの合図だと、生徒たちは学習していきます。
片付け
2〜3試合終わったら、片づけをさせます。
- 取り札が20枚あるか確認して、チャック付きポリ袋に入れさせる。
- ペアのひとりに取り札を返却させ、もうひとりに机を直させる。
以上が百人一首カルタの流れです。
全部で、早いときで5分程度、長くても10分程度です。
初回の授業こそ、ゆっくりと確認しながら進めていきますが、2回目の授業以降は、遅い生徒を待つこともほとんどせず、どんどん進めていきます。
大丈夫。生徒の動きは、日に日に良くなっていきますから。
なぜ百人一首カルタから始めるのか
ところで、いろいろな先行実践を見てみると、授業の最初にやる場合と、時間が余ったら最後にやる場合とがありました。
ぼくはどちらもやってみたのですが、結局最初、つまり導入で行うことにしています。
それは、
- 授業開始のウォーミングアップになる
- 全員が指示を聞かなければ成立しないゲームであるため、最初に授業者の指示を聞くことから始めさせることで、その後の授業の指示を聞きやすい身体性をつくれる(レディネスをつくる)
- 1人ではできない活動から始めることで、ペアやグループでの活動のハードルを下げる
みたいな理由からです。
実際、百人一首カルタから始めた場合と、そうでない場合では、授業での集中度が変わっているように感じます。
生徒たちが、授業前に他の先生に怒られていたり、友人関係でトラブルがあったあとだったりしている場合、授業がなんとなく重い雰囲気になってしまうことがあると思います。
しかし、百人一首カルタから始めることで、からだを動かし、それによって少しだけでも前向きな気持ちで授業が始められるのではないでしょうか。
百人一首カルタをしていてよかったこと
すでにいくつか書いてしまいましたが、ここも箇条書きでまとめておきます。
- 生徒が百人一首を勝手に覚えていく
- 既習文法事項の復習の際に、例文として百人一首を利用できる
- 歴史的仮名遣いの習得スピードが速い(気がする)
- 教室に活気が生まれるので、この後の学習活動に集中しやすくなる
最後の点については、このあとすぐにフラッシュカードで声を出させて、その後静かな小テストの活動にしていくときに、スムーズに授業が流れていく感覚があります。
ただ、これは経験知なので、なぜそうなるのかとか、よくわからない。
でも、例えば『データの見えざる手』なんかを読むと、人間の1日の活動には制限があって、同じ活動を1日中はできない、などの話があり、その辺と関係しているのかなー?とか思います。
また、いわゆる授業のなかでの緩急、という問題とも絡んでいるのだろうな、と。
そんなわけで、古典の授業の模索初期から、とりあえず始めてみた百人一首カルタ。
ぼくにとっては、生徒たちを授業に入らせる上で、欠かせない学習活動となっています。
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