目次
忙しい人のためのポイント
一筆箋(いっぴつせん)の使い方の基本は、
- 一筆箋とボールペンや万年筆を常に持ち歩く
- 生徒がよいこと(例えばゴミを拾っていたとか、何か手伝ってくれた)をしていたり、生徒のよいところを見つけたときに、すぐに取り出してそのことを書く
- 宛名を保護者にする。(Aくんの保護者様、など)
- 生徒に「保護者の人に渡してね」と言って、書いた一筆箋を渡す
また、一筆箋を使って、生徒や保護者にフィードバックスをすると、こんないいことがあるよ!
- 何より生徒がびっくりするくらい喜ぶ
- 保護者からの信頼度があがる
- 生徒への指導や保護者との連携がしやすくなる
- 生徒を見る目が養われる
一筆箋って?
文房具ブランドのミドリのウェブサイトによると、一筆箋とは、
一筆箋とは縦18センチ×横8センチほどの短冊型の細長い便箋のこと。
B5サイズの便箋と比較すると、文字を書くスペースは5分の1ほどですから、「文字をたくさん書かなければならない」「便箋の空白を埋めるのが大変」「書くのに時間がかかりそう」といったストレスを感じる必要がありません。
手書き文字に苦手意識があるほか、日ごろ文字を手書きすることに慣れていない人でも、気軽に使うことができます。
とあります。要するに簡易的な便箋のことです。
使う場所を選ばない、スタンダードなものから、
こういうおしゃれなもの
横書きのものまで
選択肢は豊富です。
一筆箋の一般的な使い方
一筆箋は、ちょっとしたメッセージやお礼の言葉を伝える時に、ふつうの便箋で書いた手紙のようにハードルが高くなく使える便箋です。
大仰ではなく、しかし相手にちょっとした気配りを感じさせる点で、ぼくは職員室の机の中にいつも多めに入れていて、付箋と使い分けながら利用しています。
ビジネスツールとしても注目されていて、定期的に関連する書籍も出ています。
例えば、
みたいな本は、本屋でぱらぱらとめくってみるだけでも、いろいろと参考になります。
学校現場で一筆箋を使う
実は学校現場で一筆箋を使う実践は、かなり昔からあります。
たとえば、明治図書の雑誌記事DBで「一筆箋」とキーワード検索をしてみると、たくさんの記事が出てきます。
主な使い方は、簡単です。
- 一筆箋とボールペンや万年筆を常に持ち歩く
- 生徒がよいこと(例えばゴミを拾っていたとか、何か手伝ってくれた)をしていたり、生徒のよいところを見つけたときに、すぐに取り出してそのことを書く
- 宛名を保護者にする。(Aくんの保護者様、など)
- 生徒に「保護者の人に渡してね」と言って、書いた一筆箋を渡す
これだけです。
ポイントは、生徒宛てではなく、保護者宛てに書く、という体裁をとることです。
これによって、もちろん生徒は見てくれますし、保護者にも一筆箋が渡る可能性が上がります。
生徒宛てにしてしまうと、生徒が見ただけで終わる、ということになる可能性もあります。
一筆箋は、生徒を認めるためのものであると同時に、保護者に生徒の良いところを伝え、それを使ってできればお家で生徒を褒めてもらいたいのです。
基本的な文面
ぼくが使っている基本的な文面は次のようなものです。
いつもお世話になっております。
今日、2時間目と3時間目の間に、授業に向かうため、
廊下を歩いていたら、○○くんが、落ちていた大きめの綿ぼこりを、
誰に言われるわけでもなく、さっと拾っていました。
こういうことに気づけるのは、とてもかっこいいなあと思いました。
普段からのご家庭での指導の賜物だと思います。
今後とも、よろしくお願い申し上げます。
しばしん
こんな感じです。
ちょっと詳しく説明していきましょう。
宛名
宛名は最初に書いてOKです。
正式な手紙の場合は、宛名は最後に書くものですが、簡易的な一筆箋の場合は、最初に宛名を書きましょう。
そして、宛名は保護者にします。
簡単なあいさつ
頭語や時候のあいさつも不要です。
が、最初から本題に入るのは、それはそれで無骨なので、一言あいさつを入れておきます。
見つけた良いところを書く
見つけた良いところを書きます。
このときのポイントは、
- 事実だけを書く
- 描写的に(細部を豊かに)書く
ということです。
ここではあったことを感情や、褒め言葉を入れずに書きます。
また、描写的に書く、というのもポイントです。
描写的に書く、というのは、簡単に言えば、細部を豊かに書く、ということです。
別の言い方をすれば、
ということです。
「こんなの情報としてはいらないだろ」と思うような、「2時間目と3時間目の間に、授業に向かうため、廊下を歩いていたら」とか、「落ちていた大きめの綿ぼこりを、誰に言われるわけでもなく、さっと」といった記述は、できるだけ保護者にその場にいるような感覚になってもらいたいから、書いているのです。
具体性があがることで、より伝わりやすくなります。
感想・評価を書く
描写的に書いたことに対する感想や評価を書きます。
ここでは、ちょっと恥ずかしいかもしれませんが、しっかり褒めてあげるとよいと思います。
褒める時には、行為自体ではなく、「気づきが素晴らしい」とか「思いやりがあってよい」など、生徒の考え方などについて書くとよいと思います。
褒めているのは、結果ではなくて、それを行動に移したことや、考え方の素晴らしさなのだと伝えたいのです。
家庭教育を認める
保護者の方々は、一生懸命に教育をされてきています。
どんな保護者であっても、基本的にそれは変わらないのだ、という信念をもっておくことは、保護者対応をする上でとても重要なことです。
そして、保護者の方々は同時に、子育てに悩みを感じています。
特に中高生のような、思春期の子どもをもつ保護者の悩みはつきません。
保護者を責めるのではなく、理解し、認めることがとても大切です。
したがって、それを伝えるためにも、その生徒の行動や良いところは、家庭教育の賜物なのだ、というメッセージを書きましょう。
最後のあいさつと署名
最後に簡単なあいさつをして、署名をします。
対象となる生徒がほとんど関わりのない生徒であれば、学校名や、担当するクラス名、分掌の役職など、必要に応じて入れておくとよいと思います。
また、その生徒の担任の先生には、余裕と時間があれば、一筆箋を渡したことを伝えておくとよいとおもいます。
一筆箋を使うとどんないいことがあるの?
さて、このように使用している一筆箋ですが、これをやり始めてすでに数年が経ちました。
この実践をしていくなかで、ぼくが実感したメリットを3つ挙げておきます。
- 何より生徒がびっくりするくらい喜ぶ
- 保護者からの信頼度があがる
- 生徒への指導や保護者との連携がしやすくなる
- 生徒を見る目が養われる
それぞれ補足していきましょう。
生徒がびっくりするくらい喜ぶ
これはぼくも驚いたのですが、高校生であっても、この一筆箋をもらうとめちゃくちゃ喜びます。
男女問わず喜んでくれます。
先生ありがとうございました。
小中と、まったく褒められてこなかったため、あんな素敵な手紙をもらったのは初めてです。
本人も、「こんなに嬉しい手紙をもらえたのは初めてだ。ずっと取っておく!」と言っていました。
と伝えられました。
子どもっぽいとか、幼稚だとか言う先生もいましたが、生徒が嬉しいなら、それが一番だと思います。
保護者からの信頼度があがる
どんな学校であっても、保護者との連携は必須です。
しかし、保護者に連絡する時には、よくないことを伝える場合が多くなりがちでもあります。
保護者としては、学校から連絡が来るたびによくない話を聞かされるのはつらいものだと思います。
その結果、どんどん保護者が学校を避けるようになったり、学校に反感をもつようなことになりかねません。
したがって、保護者には良い情報を伝えることも必要だ、と言われます。
しかし、学校現場は多忙で、ついつい良いことを伝えるのは、後回しになりがちです。
特に生徒指導困難校だと、日々の問題行動への対処で手一杯になり、連絡がおそろかになりがちだと思います。
そのとき、使えるのが一筆箋なのです。
一筆箋は、わざわざ放課後まとまった時間をとって電話をしなくても、生徒の良いところを伝えられるツールなのです。
生徒への指導や保護者との連携がしやすくなる
一筆箋で生徒のよいところを伝えていると、いざ問題行動が起こった時、電話連絡のハードルが下がります。
学校は生徒を見る時に、悪いとこばかりではなく、良いところにも注目してくれている、と思ってもらえていれば、連携もスムーズです。
また、別の記事にも書きましたが、生徒への指導も入りやすくなります。
生徒は自分を認めてくれる大人の話は聞く可能性が高いです。
一筆箋は、先生が自分を認める言葉を書き言葉で伝えてくれて、かつ、それを保護者にも伝えてくれるのですから、そのようなことをしてくれる先生には、心を開いてくれるかもしれません。
必ずではありません。しかし、こういうひとつひとつのことを地道に実践していくことが、他の業務の軽減になる可能性があるのです。
生徒指導困難校に勤務してきた教員が考える生徒指導で大切にしたい8つのこと生徒を見る目が養われる
しかしなにより一番のメリットは、生徒をしっかり見るようになる、ということです。
一筆箋を持ち歩き、さていつ書けるかな、と思っていると、生徒の良いところを観察せざるを得ません。
そして、生徒をしっかり観察するようになると、これまで気づかなかった良い点に目が向けられるようになります。
生徒を見る目、その解像度が上がるのです。
まとめ
ということで、最後にまとめておくと…
一筆箋の使い方の基本は、
- 一筆箋とボールペンや万年筆を常に持ち歩く
- 生徒がよいこと(例えばゴミを拾っていたとか、何か手伝ってくれた)をしていたり、生徒のよいところを見つけたときに、すぐに取り出してそのことを書く
- 宛名を保護者にする。(Aくんの保護者様、など)
- 生徒に「保護者の人に渡してね」と言って書いた一筆箋を渡す
また、一筆箋を使って、生徒や保護者にフィードバックをすると、
- 何より生徒がびっくりするくらい喜ぶ
- 保護者からの信頼度があがる
- 生徒への指導や保護者との連携がしやすくなる
- 生徒を見る目が養われる
といういいことがありますよ!
ぜひ実践してみてください。
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