ここ1カ月で読んだ本をまとめてみた【2018年11月らへんの読書記録】

2018年11月の読書記録のアイキャッチ

読書記録をとっておきたい

いま、なんていうかぼく、本を読むことが空気みたいになっていて、つまり当たり前のように本を読みまくっているんですよね。

だから何を読んだのか、というのがけっきょくふわふわしちゃうので、月1回くらいの頻度で読んだ本をざっと書いておきたいなあと。そんな風に思って書くことにしました。

まあほんとメモです。

『情報生産者になる』

上野千鶴子氏の知的生産技術本。研究計画書の書き方とか、調査の仕方とか、データの分析の仕方とか、論文の書き方とか。読んでてまた研究がしたくなった。

いちばん参考になったのは、ゼミの発表に対するコメントについての記述かもしれない。

  • コメントは批判ではない
  • コメントは反論ではない
  • 自分にできないことはコメントしない

みたいな話は、すごくだいじですよねえ。

これ、授業研究とかでは、ぜったいに踏まえておいた方がよいことだなあ、と。

『LIFE DESIGN(ライフデザイン)――スタンフォード式 最高の人生設計』

キャリア教育、こういうふうにしていきたいなあ、と強く感じた本。

デザイン思考を用いたキャリアデザインの本、って感じなんですけど、とにかく〈自分を知れ!〉みたいな話が最初の方はがーっと書いてあっていい。

それも結構具体的なワークをもとにして、とにかくやりながら考える、みたいな姿勢もいい。考えるための問いのリストみたいなのもちょくちょく入っていて(まあワークがあるのだから当然なのだけど)、こういうことをきちんと考えさせる進路指導、ってかキャリア教育だいじ。

面接とか履歴書の書き方にも触れられていて、とにかくマッチングを演出するんだ!みたいな超具体的かつまっとうなことも書いてある。

おすすめっす。進路指導部にぜひ読んでもらいたい。

Read This if You Want to Be Instagram Famous

同じ著者の、Read This If You Want to Take Great Photographsがすごくよかったので思わず買ってしまいました。

インスタやってないのに。

ちなみにこれの〈風景編〉は翻訳があるみたいですね。

でもインスタってけっこうおもしろいですよね。メディアとして。

ニューメディア研究の古典ともいえる『ニューメディアの言語』(The Language of New Media)のレフ・マノヴィッチってメディア学者も、なんか知らないうちにインスタ本出してたんですよねえ。

MEMO
ちなみにぼくは『ニューメディアの言語』は原書しか読んでないので、邦訳の評判とかはわからないっす。でも堀潤之氏が翻訳してるので、よい気がする。

話を戻すと、このRead This if You Want to Be Instagram Famousは、英語も平易だし、なおかつ具体的なので、高校生とかにも読ませてみたい。インスタはもはや女子高生のあいだでは廃れ始めている感もあるけれど、英語を読めるってことがこういう世界も広げてくれるのだ、というのはいい話です。高校の学級文庫に。

『ブッククラブで楽しく学ぶクリティカル・リーディング入門―国際化時代を生き抜く読書力がだれでも身につく』

ブッククラブ入門として。今年に入ってから読書指導についてめっちゃ興味がわいてきたので、いろいろ読みつつ実践しているのだけれど、この本は京都女子大学の江口聡氏がブログで紹介されているのを見て購入。

自主ゼミ/読書会/ブッククラブの方法は有元先生に学ぼう

で、読んで、よし、とりあえず教員のブッククラブを開くぜ!って、所属校の先生たちとブッククラブを月1〜2くらいのペースで始めた。

やってみて、国語の教員はぼくだけで、あとは他教科(地歴・公民、数学、外国語、保健・体育)の先生たちなのだけど、それぞれの知識がぜんぜんちがって、それによって読みも異なってきて、ああ、これは楽しい、と感じた。

たぶん持続させるのが難しいのだけれど、とりあえず参加している人たちみんなが1回ずつホストをやるくらいは続けたい。

以下、ブッククラブに関連するツイート。

あと、ブッククラブやるうえで、なんとなくイメージを持ちたかったので読んだ本たち。

あとこれも読んでるけどまだ「上」の途中。でもこれ、すごい面白い。ぜーんぶ手紙のやり取りなんですよね。書簡小説。

『教師の覚悟――授業名人・野口芳宏小伝』

尊敬する野口芳宏氏の評伝。

ぼく評伝って好きで、自伝とはまたちがった楽しさがあるんですよね。評伝って、要するに他の人がその人の思想を再構築するっていうか、なんつーか、ドゥルーズの言う「自由間接話法」的な感じでいい。

もちろんその人の本を読めば、「これ、違うんじゃない?」みたいな部分が出てきたりもするんですけれど。でもそれも含めて読書体験としてとても楽しい。

MEMO
栗原康氏の伊藤野枝の評伝が、個人的ベスト。今は文体の苛烈さが、それほどいい方向に進んでいるとは思ってないのだけど、この時期の栗原氏の評伝は、文体と内容がなんかうまくかみ合ってる感じですごくいい。

さて、ぼくは実践者としての野口氏に、おそらくものすごく影響を受けていて、例えばなんとなーく教員採用試験を受けてみようと思ったときに、参考にしたのはこの本だったんですね。

ぼくは教育学を大学時代にほとんどちゃんとやってないし、ましてや教員採用試験対策講座、なんてーのも受けたことはなかったので、どうすればいいのだろう、と途方に暮れているときに、この本はぼくに希望を与えてくれたのだった。

で、実際に学校で授業をするようになってからも、野口氏の著作やDVDを買い漁り読み漁り見漁り、野口氏のような授業ができるようになりたいと日々思ってきた。

この評伝が出ていたことは知っていたのだけど、ぼくにとってはとりあえずは目の前の授業の準備なんかに追われていて、ひとまずは授業についての本を読みたいという時期がかなり長くあったので、手に取る機会を逸していたのですね。

でも読んでみて、あの、野口氏の授業(っていっても映像でしか見たことはないのだけれど)における雰囲気というか、オーラというか、そういうの、どんなふうな人生から出てきているのか、というのの一端を垣間見れたような気がしています。

とにかくにこにこ笑っている、笑い続けている授業は胡散臭い、みたいな話もあって、いやはや、肝に銘じます、みたいな感じでした。

『なっちゃんの声ー学校で話せない子どもたちの理解のために』

場面緘黙(選択制緘黙)についての絵本です。かなり読みやすくっていい感じ。生徒自身に読ませたい。

緘黙については他にも記事を書いてますのでそれを参考にしてください。

対話的な学びと場面緘黙(かんもく)

ちなみにこの絵本、最後の方には医学的な解説もわかりやすい形でついているので、場面緘黙について理解するための1冊目としておすすめです。で、そのあと次のような本を読むと、たぶん理解が深まるのではないかと。

『大学授業の病理―FD批判』

同じ大学授業シリーズの、『大学の授業』とか『大学授業入門』とかは読んでいたのですが、これは読んでいなかったので購入。

宇佐美寛氏の授業実践の本は、きわめて具体的で、(それができるかどうかは別として)めっちゃくちゃ参考になります。

とくにこの本では代案授業を実際に後輩教員のためにやってみたり、年度初めの授業の流れが書いてあったりと、すごい参考になる。

個人的には板書論がすごく参考になりました。

『THE RHETORIC 人生の武器としての伝える技術』

原書はThank You for Arguingで、1年くらい前に買って、ちょっと読んで、そのまま投げてあったんですけど、いつのまにかぜんぜん原題とちがったタイトルで邦訳が発売されていたので購入して読みました。

とにかく、肉を切らせて骨を断つ、というか、試合に負けて勝負に勝つ、というか、自分の利益になるように人を動かしていく、というかなり生産的かつ実践的な本です。

同じころに、やはり議論についてちょっと勉強しようと思って、次のような本も買って読みました。基本姿勢としては、相手と戦うのではなくて、自分にとって都合の良い結果を生むためにはどうすればいいかを考えなさい、という話で共通しているように思えた。(というか、なんかいちいちぜんぶ書いていくのがめんどくさくなってきた)

こういう、けっきょく自分にとってどうなるのが最良なのか、というのは、議論していると見失いがちなので、常に意識しておきたいなあと思いました。

Hacking Digital Learning Strategies: 10 Ways to Launch EdTech Missions in Your Classroom

ミッションベースドラーニング mission-based learningなるもの、ぼく知らなかったんですね。

まあ、だいたいはプログラム型学習 project-based learningみたいなもんかなあ、と。つーことはミッション型学習とでも訳すのかな。

ニューメディアとうまく付き合っていくことを教えるって意味で、どちらかというとEdTech全般っていうよりも、情報科の授業って感じの内容だった。10のミッション遂行を通して、メディアリテラシーとか、そういうのを身に付けさせる。

10のミッションはけっこう面白そうで、ざっと列挙すると、

  1. ゲームの攻略動画をつくれ
  2. 自撮りの冒険に出よ
  3. ソーシャルメディアでの架空のプロフィールをつくれ
  4. デジタル教科書に学習をリミックスせよ
  5. 討論せよ、ただし人をディスるな
  6. 真実を探せ、そして保ち続けよ
  7. グローバルなオフ会をせよ
  8. 市民科学者として世界を啓蒙せよ
  9. デジタルバッチを使って他の人に感謝を表せ
  10. 解決方法を見つけるためにクラファンを使え

だいたい、しょっぱなは身近なテクノロジーを使って、生徒たちが好きそうなものを題材にしたミッションが課され、だんだんシティズンシップ教育みたいな話になっていって、こういうのが同じ本の中で連続的に論じられるのは面白いなあ、と思いましたね。

でも例えば①とかもけっこう本格的で、モデルとなる動画を探して、自分が解説しようと思うことを決めて、で、絵コンテ(!)を書いて、撮って、編集して、みたいな話をしていて、わりとハードなんですよね。

ただ結論部でも、「意味ある学習ミッションはまじはんぱねえから!」みたいな話があって、なるほど、課題解決学習というのはこういうのなのかもしれない、と思いました。つーか課題発見は、解決していく中で出てくるのかもしれない、とか。

なにかの問題を解決しようとしているうちに別の課題が現れてくる、っての、わりとありますもんね。でもそういうの、課題発見・解決型学習みたいな話にはあんまり出てこない。探究のスパイラル、みたいなのって、実は円環的ではなくて、循環的でもなくて、再帰的なプロセスなんじゃないか、とかも思いました。

このHacking Learningシリーズ、けっこう他のも面白そうで、最近Assesment編は翻訳が出ています。

とりあえずぼくは、プロジェクト型学習 Project-Based Learning編を買って、読もうかなって思ってるところです。

あとEdTech関連では、この本も読んだ。

この本も面白かったけど、ほかのEdTech本でけっこう言われていることが多くて、どっちかというとカタログ的に便利な本って感じでした。

でもEdTechってなんぞや? みたいな人には、かなり良い入門書だと思いました。

学校における自殺予防教育プログラムGRIP—5時間の授業で支えあえるクラスをめざす

帯に次のように書いてあります。

「命を大切にしよう?」
自傷によって心の痛みをなんとかやり過ごしている生徒にとって、
これほど腹立たしい「お説教」があるだろうか。
自殺にかぎらず、深刻な悩みを抱えた子どもにとって本当に必要なのは、
「ダメ。ゼッタイ。」のような「根性論」ではなく、大人とつながり、相談できるようになることだ。

南直哉氏という、恐山にあるお寺の院代を務めているお坊さんがいてですね、その人が自殺について、どの本だったかは忘れたんですけど、こんなふうに言っていて共感したことがあるんですね。

自殺しようとする人にできることは、「生きていてほしい」とお願いすることだけだ。

いろいろと説得したって、自殺しようとしている人は、例えば周囲の人たちが悲しむとか、そんなことはわかったうえで自殺するんだ、という話で、こういうふうな考え方はだいじだよなあ、と思った覚えがある。

で、この本なんですけど、基本的な姿勢というのが、直接自殺を止める、みたいなスタンスではないところがよい。

むしろ、なにか死にたくなるような思いを持ったとして、そういう思いや悩みを話せる〈大人〉をどうやって作るか、という点にフォーカスしたプログラムになっているんですね。これすごくいい。

これは言語化する、という話とつながっていて、自分の置かれている状況を、ほかの人に相談することによって、メタ認知できる、という効果も期待できるんじゃないか、とか。あとは、そもそも誰かに「助けて」と言えることって、生きていくうえでめちゃくちゃだいじな力だと思うんです。

この本、授業の指導案だけではなくて、教員用の研修プログラムもきちんと入っていて、実際に使おうと思えばすぐにでも使えそうなところがとてもよかった。(カリキュラムとか指導計画の問題はあるだろうけど)

目次だけでも見てみてください

あと指導案とかの資料も、ここからダウンロードできます! 太っ腹!

『暴走する能力主義−教育と現代社会の病理』

あすこまさん(@askoma)がおすすめしていたので購入して読んだんですけど、めっちゃいい本でした。

というか、ぼくは今の教育改革を歴史的に相対化した方がいいとずっと思っていて、そのためには1960年代の日本における教育言説の検討をしないとなあ、とか思ってたのですが、そういう問題意識で読んだらどんぴしゃりでした。

歴史を知らない、ってのは恥ずかしいんですよね。「これ新しいんだぜ!」ってドヤ顔していても、実はもうすでにけっこう前に言われていることだった、みたいなの、やっぱり勉強不足で恥ずかしいと思うんだ。だから歴史を勉強しないとな、特に教育史とか、ぼくぜんぜんやってないしな、と思った次第です。

『WORK DESIGN(ワークデザイン):行動経済学でジェンダー格差を克服する』

これもほんと面白かった。

バイアスからぼくたちは逃れられないわけですね。どう意識したって、すべてのバイアスから逃れることはできない。じゃあそもそも格差が生まれないようなデザインをしたらいいんじゃないの、って。

その具体的な方法がよいし、また、全会一致方式を採用してみよう!みたいな話も面白い。全会一致と言えばアナキスト!ってこれも意図せず読んだ。

ただ正直、この文体、そこまで好きじゃないんだよなあ。栗原氏の文体は、伊藤野枝の評伝であるこの本くらいがちょうどよかった気がする。少なくともぼくにとっては。

『Pythonによるテキストマイニング入門』

Pythonの勉強をちびちびしながら、とりあえずテキストマイニングとかやってみよう、と思って購入。かなりガチな本でした。でも参考になった。

特に青空文庫のテキストデータを整形するコードとか、なるほど、こういうふうに考えて不要なものを除去していけばいいのね、と勉強になりました。

ちなみに自然言語処理の入門として、先月これを読んでおいてよかった、と思った。

試験に出る哲学―「センター試験」で西洋思想に入門する

このタイプの、入試をつかって学ぶ教養系の本、わりと好きなんですよね。で、倫理って確かに類書がなかったように思えて、これは参考になるのではないかと思いました。

センターの問題、倫理とかぜんぜん見てなかったけど、けっこうおもしろい問題も多くて、いいじゃん、センター試験、みたいに思った。単に知識を暗記しているだけでは解けない問題もけっこうあるよねえ、現行のセンター試験でも、と改めて感じた。

『なぜ「偏差値50の公立高校」が世界のトップ大学から注目されるようになったのか!?』

この本はですね、職場の同僚に貸したんですけど、ものすごく評判がよかったですね。超面白い!とみんな絶賛だった。

とにかく超面白いです。特に前半。

3年目、4年目になると、なんとなく軌道に乗ってきていて、落ち着くんだけど、まあそれはそれで、たった数年で文化が変わるのだ、ってのの実例としていいかんじ。

まあ今後、著者がやってきたことが形骸化しないかが気になるところではある。

ちなみにこの本の中に出てくる、これもざっとだけど読みました。こういうワークブックみたいなの、やっぱ具体的でいいよねって思う。

『アーレンシンドローム 光に鋭敏なために生きづらい子どもたち』

ぼくはずっと、視覚機能に困難を抱えている生徒に対しては、ビジョントレーニングくらいしか手立てがないのだと思っていたんですね。

要するに、眼球運動の困難さ、みたいなのに問題を収束させていた感があって、この本を読んで反省しました。

というのも、ぼくももともと光に鋭敏で、あまりにも明るいところにいると目がすごく疲れたり、頭が痛くなったりするタイプで、白い紙(めっちゃ白いやつありますよね)の本とか、読んでてしんどいときがある。

アーレンシンドロームっての知っとくだけでも、そういう可能性を考えられて、まあ具体的な支援ができるかどうかはわからないけど、自分に余裕は生まれるよね。

具体的な事例が豊富で、イメージしやすく、しかも安い。おすすめです。

『物語論 基礎と応用』

語り、って話をされたので、改めて読み直しました。

大学院のときに、ぼくの先輩でずーっとジュネットの著作を読んでた人がいて、その人は文学研究者ではなかったのだけど、ジュネットのあの、狂気じみた分類愛みたいなの、とてもいいんだよ、と言われたのを思い出しました。

この本を読んで、現代文学いろいろ読みたいと思って、とりあえずフアン・ルルフォは買った。

トニ・モリスンとか、阿来とかも読みたい。

今月のベストは

けっこう読んだ。30冊くらい? 他にも読んでるけどあんまり覚えていないものもある。

今月のベストは

ですね。まじで面白いから読んでみてください。

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